「禁止法はOK、その代わりに・・・」への転換

一気に雰囲気が変わってきた印象です。
WTOでアメリカと小国アンティグアが争っているのはよく知られています。
アメリカ政府が外国のオンラインギャンブルサイトで遊ぶことを禁止しているのは不公正だとして、アンティグアが数年前にWTOでアメリカを提訴したものです。
その訴えは、WTOで認められています。
本来であれば、アメリカ政府はこれを受けて、国内業者に許可しているのと同じことを海外業者にも許可する必要があります。
つまり、オンラインカジノなどのオンラインギャンブル市場を開放しなければなりません。
しかし、アメリカ政府にその気が全くないことを悟った諸国は、ここにきて方針を転換しました。
EUが今週、こんな要求を行いました。
アメリカがオンラインギャンブル市場を開放しないのであれば、そのかわりとして補償金を支払うか、または他の分野でEUの保護貿易を認めろ、というものです。
アンティグアも、その後すぐに、アメリカはWTOの勧告に従わないのであれば、毎年罰金を支払えという要求をしました。巨額の罰金の請求です。
結局、どこの国もアメリカ人がオンラインカジノで遊べるかどうかはどうでもよく、自分たちの国の利益をどう守るかということが行動原理です。
アメリカがどう応じるかは分かりませんが、禁止法撤回を考えていない以上、この要求を部分的にでも受け入れることになるだろうと考える専門家も多いようです。
アメリカ国内で禁止法に対して反対運動を行っている人たちは、「禁止法は国民の権利を侵害するものだ」として、自由という価値を守るために闘っている面があります。
が、共同戦線をはっていたと思っていたEUなど外国勢がこのような形で実益をとる現実路線に転換したのを見て、さぞがっかりしているものと思います。
世界のリアリティの一側面を見た気がした一件でした。
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